北 票 炭 鉱 万 人 坑

 北票炭鉱万人坑
遼寧省北票市

 北票市内の小さな商店も並ぶ閑静な住宅街から車で一〇分ほどの山の中に北票炭鉱台吉南山万人坑があり、そこに北票鉱工記念館(北票市日偽時期死難鉱工記念館)が造られている。北票鉱工記念館の中心は記念碑と資料館と事務棟のある広場だが、その周囲一帯が犠牲者が埋められている万人坑だ。事務棟のすぐ前に、大量の遺体が投げ込まれた深い谷もある。そして、万人坑の何ヶ所かが発掘され、それぞれの発掘現場を保存する展示館が建てられている。
 北票炭鉱万人坑の全体像について、李秉剛氏の「万人坑を知る」(東北大学出版社=瀋陽)で確認しておこう(要旨)。
 『一九三三年二月に日本は熱河省を占領し、北票炭鉱も占領した。一九三三年六月から一九四五年八月まで一二年間の占領期間中に六三平方キロの区域で石炭八四二万トンを収奪し、三万一二〇〇人が死亡した。そして、冠山・北壁外・三宝・城子地・台吉南山の五ヶ所の万人坑が作られた。一九六七年に北票工務局は台吉南山の万人坑を大規模に発掘し、二五・五アールの山腹で六五〇〇体の遺骨を発見し、そのままの状態で保存した。台吉南山だけで一万体以上の遺骨があると推定されている。』

写真撮影(2009年9月26日)と解説 青木 茂

北票市日偽時期死難鉱工記念館中央広場
 記念館の門を入ると、四〇メートル四方くらいの広場があり、門のすぐ左手に事務棟の建物がある。広場の奥の方に、「日偽統治時期北票煤鉱死難鉱工墓、一九六七年九月二十日立」と刻まれた高さ一〇メートルくらいの大きな記念碑が建ち、記念碑の右手に細長い造りの資料館がある。

遺骨保存展示館A
 最初の展示館では、頭から足先まできちんと整った遺骨が、頭の位置を互いにそろえ、同じ向きに碁盤の目のように整然と並べられている。隣り合う遺骨の左右の間隔は一メートルくらい、上下には五〇センチほどの間隔だ。埋葬場所がたくさんあったときの遺体の埋め方で、遺体埋葬を命じられた中国人が同朋の遺体を丁寧に埋葬したのだろう。この展示館の内部の広さは、幅一〇メートル・長さ二〇メートル弱くらいかと思うが、展示館周囲の地面一帯に土饅頭が作られていることが分かる。私たちが直接確認できる発掘された遺骨はほんのわずかな部分でしかないのだ。

遺骨保存展示館B その1
 次の展示館は、展示館の中では一番大きい建物で、幅一〇メートル・長さ三〇メートルほどの室内に、二列の長いガラスケースに覆われ遺骨が保存されている。

遺骨保存展示館B その2
 ガラスケースにより地中を縦断面で確認できるようにされていて、土の中に遺骨がまとまって埋められている様子が良く分かる。ここには、頭と足の向きを二体ずつ並べ変えた四体の遺骨が一つの穴にまとめて埋められていて、四体と次の四体の間隔もほとんど空いていない。埋葬場所が狭くなり、一体ずつ丁寧に埋葬することができなくなったのだ。

遺骨保存展示館B その3
 中央広場から一番近いところにあるこの展示館には二四〇体の遺骨があり、たくさんの花輪が供えられ、追悼の言葉やスローガンを書いた垂れ幕や横断幕が多数掲げられている。解説員(記念館職員)が丁寧に説明してくれる。

労工の遺体が大量に投げ込まれた谷
 埋葬場所がいよいよ狭くなり、また死者が多数になると、穴を掘って埋葬することもできなくなり、周辺の谷に次々と遺体を放り込むようになる。遺骨保存展示館C(写真中央の白っぽい建物)の下(写真手前)には、労工の遺体が大量に投げ込まれた深い谷があり、そこに「万人坑遺跡」という表示板が立てられている。
 この「万人坑遺跡」の谷は、少し高い位置にある事務棟(写真手前側)の目の前にあり、遺骨保存展示館Cや「万人坑遺跡」の谷全体を事務棟から見下ろすことができる。

遺骨保存展示館C/展示館内部
 「万人坑遺跡」の谷に乱雑に放り込まれ積み重なった遺体の遺骨が遺骨保存展示館Cに移され保管されている。深い谷から収集された遺骨はバラバラに山積みされていて、一体一体を区別することはできない。

煉人坑(遺体焼却炉)
 埋葬場所がいよいよ無くなると、煉人坑という焼却炉が作られ遺体を焼却するようになる。この煉人坑跡を包むように展示館が建てられ保存されている。煉人坑跡には、焼かれた遺骨が散在している。



 北票炭鉱の労工証
【李秉剛教授(北京)提供写真】

 北票炭鉱の日本人現場監督が使用した刑具の一部
【李秉剛教授(北京)提供写真】

 日本人現場監督が使う刑具に、「打ち殺してもかまわない」という文字が刻まれている。すなわち、日本人現場監督は、労工を打ち殺しても一切罪に問われない。
【李秉剛教授(北京)提供写真】
 台吉南山万人坑に埋められた遺骨
【李秉剛教授(北京)提供写真】
 北票炭鉱の生存労工・崔鵬挙さん
【李秉剛教授(北京)提供写真】




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